「どうするって…多少遠慮しつつ、貰いますね」
「だろー?それと同じな訳」
それと同じ…うーん。そうなんだろうか…喫煙者にとっての煙草って強い…
「だから、俺の命と同じくらい大事なソレをハルキに託したって事な訳。つまり俺の生死はハルキに託されたと言っても過言では無い」
「それは…荷が重いです」
「そーとも。重要だとも。でもね?」
「?」
「だから、いつも会うだろうハルキに頼んだんだよ」
そう告げるあめさんの、真っ直ぐとした視線。…それは、誰かさんの答えとして受け取っても、良いのだろうか。
そしてこの日の私は、先日同様タクシーに乗り込み、家まで帰った。
この日からだ。煙草を持ってるだけの、たったそれだけのお礼だけど、それが私のタクシー代になった。
…そう、あれだけ断っていたタクシーで送って貰う事が、いつの間にか当たり前になったのだ。
あめさんが私を必要としてくれているのだと思えたら、今まであれだけ断っていた自分が可笑しくも思える程に、心境は変化していた。
この短期間で、こんなにも自分が変わるなんて。自分の心が変わるだけで、こんなにも現実は変わっていくものなのかな。今の私は、これでいいのかな。
…なんだか難しくて、自分が分からなくなった。