その後、次に彼と会ったのは、初めて会った日から3日後の夜だった。
いつもの如く、私はバイト後、人気の無い裏通りを自宅に向かって歩いていた。途中にある細い横道の階段を下りると、その先は大通りに繋がっている。
自宅は大通りにある為、いつもその階段を使っているんだけど、この時間帯だと同じくこの階段にお世話になっている人に会う事は殆どない。
だからいつも、誰にも会わない事を良い事に鼻唄交じりに歩いていたりするんだけど…今日は違う。誰か、階段に座っている。
恐る恐る近付いてみると、どうやら煙草を吸っているらしいその人は、私の存在に気が付いていない様だった。
…どうしよう。
細い道な為、人が2人…ギリギリ3人通れるくらいの幅しか無い。その人の横を通り抜けるという事は、かなり近い距離を横切る事になる。それってこんな時間だし、結構恐い。しかもこの人、黒いスーツ着てるし…
でもわざわざ道を戻るのも嫌だし、この先大通りに出るためには結構歩かなければならない。バイト上がりのこんな時間だからこそここで近道して帰りたい。
どうしようかなぁ、と立ち止まって悩みつつ、結局私は面倒臭がりな自分に負けて、ギリギリをそうっと下りる事に決めた。