どんどん沸き上がる彼への質問は、口から外へ飛び出す一歩手前まで来ている。でも、言い出せない。あめさんが嫌がるかもと思うと、それらを簡単に表に出す事は出来ない。

聞きたいけど聞けない、そんな私の葛藤はあめさんに伝わっていたみたいで、彼は少し困ったような表情で笑った…ように、私には見えた。


「まぁ、つまりね?」


彼は、真っ直ぐに私を見据えて言う。


「それでもここに俺が居るのは、誰かさんに会いに来てるからってこと」


…彼のその言葉が何を表しているのか、それが分かった瞬間、不覚にも私は感動してしまった。

あめさんの中に居る私の存在を確認した。そんな、夢みたいな現実。そう、夢みたいな…あれ?都合良すぎる?彼にペースに乗っかって、勘違いしてる?誰かさんって、本当に私?


「帰ろうか」と、いつものように言った彼に、「あの…あめさん」と、小さく声を掛けると、当たり前のように彼はニッコリ笑って私を見てくれる。

それが嬉しくて、だから余計に今から聞こうとしているソレを口に出し辛くなったけれど、でもこんな機会はもう二度と来ないかもしれない。今言うしかないんだからと、自分を勇気づける。


「あの…その…ですね?誰かさんって、」

「あ、アレ持って来た?」