なるほどと、私は勝手に納得した。あめさんは仕事で悩んでいて、いつも飲み歩いていると。そういう事なのだと。
「じゃああめさんは、いつもタクシーで帰ってるんですね…だったら飲み屋さんの前までタクシーを呼んで、迎えに来て貰えば良いのに」
そうした方があめさんが楽なんじゃないかなと思う。だから提案してみたけれど、あめさんはハテナを浮かべた表情で私を見詰めて、ケロッとした顔で返事をする。
「タクシーじゃないよ、ミトが居るから。奴が車用意するからヘーキ」
そうかそうか、ミトさんが。ミトさんがいつも用意してくれるから、タクシーはいらないと。いつも迎えを頼んでるから大丈夫…って、
「いつもミトさんに?!」
信じられない!と、私が声を荒げると、あめさんはキョトンとした表情で変わらず私を見詰める。意味が分かっていないという事だ。
「あの、私が口を挟む様な事じゃないかもしれないですけどね?いくら仲が良くてもこんな時間に毎回呼ばれたらミトさん、大変じゃありません?」
「そう?」
「そうですよ、向こうも予定とかあるだろうし…」
「うん、でもヘーキ」
「はい?」
「奴の仕事だから。つーか奴のせいで飲んでるようなもんだから」
「…はい?」
もう正に、謎が謎呼ぶあめさん事情。
酔っ払ってるのはミトさんのせい?というか、今更だけどミトさんって何者なんだろう。いつも送って貰ってるなら、だったら私と会うあめさんは?なんでこの階段に居て、わざわざタクシーで帰るの?