「もうヤバイ!感激!!」


夢みたいだと、今日何度目になるかも分からないその言葉を繰り返すユイ。そんな彼女に、始めこそ一緒に喜んでいたものの、今では溜息のようなよかったねの、呟きしかしてあげられない私が居る。

一体何が彼女をそれほどまでに喜ばせるのかというと、


「だって当たったんだよ、ライブのチケット!見れるんだよ?生アサヒだよ!!」


と、いう事なのである。


"アサヒ”

それは、老若男女問わず絶大的な人気を誇る、女性歌手の名前だ。透き通るような歌声でどんな曲調のものでも可憐に歌い上げる彼女は、歌を歌うために生まれて来たのだとも言われていたりする。

その人気には、このように歌が上手いのはもちろんの事、その他にも人間離れした彼女の容姿も大きく影響を与えている。

真っ白で、真っさらな肌に、細身で華奢な身体。長い手足に、小さくまとまった顔の造りの中の大きな存在感を放つ二つの瞳。その姿はまるで、フランス人形のよう。

何を取っても間違った部分なんて見当たらないのに、作詞作曲まで手掛けるっていうから驚きだ。正に、神様から二物も三物も頂いている彼女。


そんな彼女のライブは常に物凄い倍率らしく、ファンクラブに入っているユイでさえも、もう随分とフラれてる。今回はついに念願の当選なのだと、今日何度も聞かされた。

もちろん、世間の常識から漏れず、私もアサヒが好きだ。彼女の歌にかなり癒されている。だからちょっとだけ羨ましい。