そして私はもう一度傘を差し出したのだけれど、彼はどうも受け取ろうとしない。なんだか困ったような表情をして、眺めているばかりである。
受け取って貰えないか…気にする事無いのになぁ。
「あの、別に返して貰わなくていいんで、本当に気にしないで下さい」
「…あー…」
「はい、どうぞ。では私はこれで」
…うん、もういいや。とにかく持たせて帰ろう。
まだ何か言いた気な彼を取り残して、雨の中折り畳み傘を差しながら家路についた。
最終的には、納得がいって無いようだった彼に無理矢理傘を握らせる形で終わった訳だけど…まぁ、これはこれで良しとしよう。完全に自己満足の、親切の押し売りだ。私自身、そんな自分には気が付いているし、帰ってから反省する事だってある。でも、止められ無いんだ。
だってこれが私だから。