「面白い…ですか?」
「うん、抜群に」
「え、私が?」
「とーぜん」
「え、あめさんじゃなくて?」
目をパチクリさせて彼を見ると、彼もまた、目をパチクリさせて私を見た。互いにパチクリさせながら、え?なんで?と、見つめ合う私達。
「だって、あめさんの言う事っていつも面白いです。というか、いつも素敵」
「すて、…素敵?」
「はい。言う事もやる事も、とっても濃いと思います」
他には無い、とても濃い経験。それがある日突然、私の世界に飛び込んできた。
まだ見た事の無い、聞いた事の無い世界を運んできてくれるような、そんな期待に胸が高鳴る時間をあめさんは私にくれる。
あめさんはとっても面白くて、とっても素敵で、今、私の世界の中心に居るような気がする。一つの事しか出来ないような私とは、絶対に違う存在。
「…あー、褒められてとっても嬉しいけど」
自分の頬を弄りながら、照れ臭そうに言う彼の、
「でも、大概がただの酔っ払いだからね」
その言葉だけは、残念ながら否定出来なかった。そうだね、あめさん。あめさんはいつも酔っ払いです。
「今日も酔っ払いなんだから、早く家に帰るべきです。こんな所に来ちゃいけませんよ」
毎回毎回、ヘロヘロな状態でこんな所に居たら危ないと思うよっていう、注意の意味と、心配の気持ちを込めてお伝えした。今日なんて待っていてくれたみたいだし。
でもあめさんはその私の言葉を、違う様に捉えたらしい。
「何それ、もう来んなって事?」
そう言った彼の表情は、またもや不機嫌絶好調に戻ってしまった。