「シラフん時ならともかく、酔ってるとコレだからなぁ。コイツ結構酒強いんだけど…なんか、思い悩む事があるらしくてさ」

「…そうなんですか、思い悩む…」

「うん。だからアイツにもしなんかあった時、支えてやって欲しいんだよね。すっかりハルキちゃんに懐いてるみたいだし」


…そう、バックミラー越しに言うミトさんに、懐いてるかどうかは分からないけど、私で良ければいつでも力になりますよ。みたいな事を私は答えたと思う。

なんて答えたのかハッキリ覚えていないのは、あめさんが悩んでるなんて初耳だったから。だから、内心動揺していた。心の中ではあめさんを心配する気持ちの方が強くて、ミトさんとの会話どころでは無くなっていた。

しかし、そんな私にミトさんが気づくはずもなく、「そういえば、最近タクシー使ってるらしいんだけど…」と、彼はまた新たなあめさん情報を私に提供して来る。


「なんか運転手と揉めたらしくてさ。ハルキちゃん知ってる?」

「えぇ?!いえ、初耳です」


運転手と揉めた?それって、いつ?私が乗せた後の話だよね?


「まぁその時は偶然知り合いが近くに居て俺に連絡入ったから良かったものの、今後有り得ないとは言えねぇ訳だし、心配なんだよな」


まさか、大丈夫だろうと思って乗せていたタクシーでそんな事があったなんて…


「それは…心配ですよね」


自分の行動に、強く責任を感じる。私が一緒に乗っていたら平気だったかもしれない…あめさんの誘いを断って、一人で行かせるべきじゃなかったのだ。中途半端な行動で満足していた自分が恥ずかしい。


「だからそんな事も有るしな?コイツが来た時にはそういう面でも面倒見てやって貰えんと助かるんだけど…やっぱ図々しい?」


そんな中に投げ掛けられた提案に私の返事はもちろん、「任せて下さい!」の一言だった。張り切って答えた。もちろん、私で良ければやらせて頂きます。

急に責任感に満ち溢れた私に驚きながらも、彼は「悪いな、ハルキちゃん」なんて言いながら私に笑って見せ、そして何かあったら連絡出来るよう、自分の連絡先置いていったーーそんな、夜だった。