静まりかえった車内で、別に私も一緒に乗って帰る必要なんて無かったのでは?と、すっかり爆睡モードのあめさんを眺めながら思う。
「ハルキちゃんってコイツの事、どう思う?」
突然の問い掛けにハッと顔を運転席へ向けると、柔らかな表情でミトさんは私に尋ねていた。
「どう思う、ですか?」
「うん。なんか最近よく迷惑かけてるみたいだからさ」
前を見たまま、彼はケラケラと笑った。
「いや、迷惑だなんて。そんな事はありません」
「そう?だったら良いんだけど」
そして、少し思案顔のミトさん。なんだろう?
「…難しい奴でさ、困ってたんだよな」
「何をですか?」
「扱い。コイツすげぇ自由だから。放っといてやりてぇけど、そうすんと俺が怒られちゃうし」
「誰にです?」
「んー、お姫様に」
「?」
お姫…様?
「…一体どこの王子様だって言うんですか」
どんな冗談なんだと、呆れたように言う私に、ミトさんはヘラヘラ笑いながら、「あー、王子様って訳では無いよなぁ」なんて。
なんだか、どこまでが冗談でどこまでが本当なんだか、よく分からなくなってきた。
「そこで頼みたいんだけど…聞いてもらえる?」
「あ、はい、何ですか?」
「コイツの事なんだけど、ハルキちゃん。もし大丈夫ならさ、コイツが危ない時は助けてやって欲しいんだよね」
「…え?」
危ない時?