どうしようかなぁ、と困り果てた私の耳に、小さな笑い声が飛び込んできた。
「すげぇ頑固、君達」
声の主はミトさんで、「え、君達?」と、目をまん丸に見開いて聞き返すと、ミトさんと目が合った瞬間、彼は大きな声で笑い始めた。
「もういいじゃん、二人で乗ってけば。コイツが言うこと聞かないのは目に見えてんし、ハルキちゃんが乗ってくれると助かるんだけどなぁ」
…そういう事か。今日始めて会った人に見抜かれるのもなんだか悔しいけれど、確かに、私もそういった点で頑固であったと、ミトさんの言葉で納得してしまった。
でも乗せて貰うなんて悪いし、やっぱり線の内側に入ると思うと…
「ね?その方が助かるし、お願いハルキちゃん」
「…分かりました」
…うん。お願いと言われると、私は駄目だ。
結局あれだけごねた私とあめさんだったけれど、二人仲良く後部座席へ乗る事になった。
行き先を告げた後、私はミトさんに申し訳無くて、意味が無いのは分かっていながらもなるべく小さく、なるべく存在を消して座っていた。
私の隣ではあめさんがぐっすり眠っていて、荒い運転だなんて言ってたくせにしっかりと閉じられた瞳に開きそうな気配は無く、実際にミトさんの運転はちっとも荒くなんて無かった。