今のあめさんの話し出すタイミング、絶対に可笑しかったし、絶対にワザとだったと思う。明らかに話の途中だったのに、別の内容を被せてきた。

こんな態度を取られたら余計に気になってしまって、だから私はミトさんの方を向いて、もう一度話して貰うようお願いしてみようとしたけれど、


「そのためにシートベルトがあるんだろ?」


なんて、コロッとあめさんの話題に乗っかった彼。この人に聞いてもきっと駄目だと悟り、次にあめさんに視線を向けるが、


「乗ってきなよ、たまには」


笑って告げるその言葉で、とうとう話し掛けるタイミングを逃してしまった…きっとわざとだ。二人して私に質問させる気が無いように感じる。

つまり、あめさんはさっきの話をしたく無いのだ。


「…いえ、割と家近いんで大丈夫です」


それならもう、あめさんが作り出した流れに私も乗るしかない。だって教えたくないと思ってるのなら、仕方がない。

いつか教えてくれる日が来るのだろうか。まだまだ私達はそこまでの仲では無いと知り、そりゃあそうかと、知りたかった気持ちに蓋をした。

それならば気長にいつか教えてくれる日が来るのを待つのも良いだろう。出会ったばかりの頃は、また会える事を信じられるようになるなんて思いもしなかったのだから、きっとこの先、教えて貰える日も来るだろう。

そう、きっぱりと割り切って、スッキリとした気持ちで帰ろうとした、その時だった。


「だったら俺もそっちから帰る」