しかしやっぱりというか、今更目を逸らしたって遅かったらしい。視線を感じる、すごく見られている。
駄目だ、そろそろ帰ろう。私がそう決断した、その時だった。
「だーれだ?」
耳に入って来たのは、聞き覚えのある声。
その声を確認した私は、直ぐに振り返る。するとそこには、いつもの彼。
「俺、あめさんでしたー」
なんて言いながらふにゃっと笑うあめさんに、私はほっと胸を撫で下ろした。
やっぱりあめさんだった、という事と、いつも通りのあめさんだ、という事。この時の安堵感といったらない。
「あめさ、」
反射的に、私が名前を呼ぼうとしたその時だった。
「おい、何なんだよ」
不機嫌そうな声と共に、勢い良くドアを閉める音が聞こえてくる。
初めて聞いた声に驚いた私が音の元へと目を向けると、運転席からガタイの良い男が降りてくるのが目に入った。
肌が黒い。そして髪は真っ黒な短髪。
ガタイの良さも有り、スポーティーな印象を受ける。…でも、この人も黒スーツだ。
その男は、思わず固まる私に、あめさんへと向けていた視線を移して、「ん?」と怪訝そうな声をこぼすと、私とあめさん、交互に視線を移した。
「何、そうゆう事?」
「…?」
「この子?この子が例の子?」