帰る方向は多分同じ方だと思う。いつも帰りに見送る感じだと。あめさんも何度か乗ってきなと誘ってくれた。でも毎回その申し出を断る。

ちゃんと酔ってる時の記憶があるって本人も言っていたけれど、やっぱり私には乗れなかった。もしかしたらただ単に私が頑固なだけかもしれない。


そんな事が続いたある日、いつもの如くバイト帰りにあの階段へ向かうと、その日はあめさんの姿が無かった。

それを私は珍しいと感じた。ここの所、毎回同じ曜日に彼は居て、居るのが当たり前となってる節があったから。…だからだろうか。彼が居ないという事を知った瞬間、一気に今日一日の疲れがのしかかってきたように思えたのは。それと同時に沈んでいったこの気持ちは。

このまま真っ直ぐ帰るのかと思うと、なんだかやりきれない。…このまま少し、待ってみようかな。でも、今まで私が先に着いた事なんて一度も無かった訳だし、可能性的に待っていて会える確率はほぼゼロだと思う。

最近が多かったんだ。そう、最近結構会う機会があったってだけで、別に落ち込むほどの事じゃない。きっと次の時はまた会える。そう自分に言い聞かせるものの、足はその場から動こうとしない。

…少しだけ、待って見ようかな。


なんて思ったその時だった。真っ暗闇の中、黒い車が現れたのは。