「…分かりません」
何をどう大切にしているのか。私には大切にする方法も、今の現状もさっぱり分からない。
でもあめさんは、「いや、してるよ。ハルキは」
と、私ですら分からない私なのに、自身満々に言ってのける。
「言ったじゃん。俺は努力をしてるかどうかの話をしたんだよ?その結果で嫌いな自分が見えたなら、それはそれで良い事だと思うんだよね」
「良い事ですか?」
「そう。自分を知ったからこそ、次に行けるんだから。その知ろうとする事こそ、自分を大切にしてる証拠」
そして、「大事でも何でも無い奴を、そこまで知ろうとしないから」なんて、あめさんは笑いながら付け足す。
「時間と労力をかけて知った自分にはその分の価値があるんだから、大切にしないと。別に凄く高価にしなくても良い。ただ、安売りだけはして欲しくないっつーか、したくない」
…あぁ、そっか。あめさんの言葉に、私はようやく納得した。大切だから知ろうとする。努力して来たって事は、それだけ自分を大切にして来たって事。
自分を好きにならなくても良い。でも、嫌いな自分だったとしても、今までそれだけ手をかけてきたんだから、それ相応の価値はある。
そして、全てを知ったそこから自分を磨いていけばいいんだよね。
「…あめさん」
「んー?」
「なんか、すっごい良い事教えて貰った気がします」
「でしょ?」
「そんなあめさんに、もう一つ質問が」
「…プライベートな事以外なら」
「あめさんは、自分が好きですか?」
「……俺?」
うーんと、目線を下げて少し悩んだようだった。でも彼が顔を上げたのはそのすぐ後の事。
「好きでは無いし、嫌いでも無い」