「…もしかして、また寝てたりします?」
しっかり目を閉じた彼に向かって、私は尋ねてみた。
顔が見えなくても、声が聞けなくても、もう私が彼を間違える事は無いって断言出来る。あめさんは、今日もここに居る。
しかし、やっぱりと言うべきか…彼は目を覚ます素振りを見せず、あえて言うなら、ピクリとも動かなかった。よっぽど眠りが深いんだろうな…こんな場所なのにと、彼の顔を覗き込みながら私は思う。
でもなんだろうな、この間近で見ても絶対的な綺麗さ。女の私ですら羨ましく思う。長い睫毛にきめ細やかな白い肌。スッと通った鼻筋。引き締まった体型だって、余分な物がこれっぽっちも見当たらない。しかも、これで目は横長パッチリ二重である。こんな人間が存在するなんて、きっと本人を見ない限り信じられないだろうな。
彼の持つその容姿は、彼の人間性を表しているようで、誰よりも強い個性を感じた。多分これはきっと私だけじゃない。男女問わず、世の中の人間が彼を見た瞬間、思う事だと思う。
なんか…同じ世界を生きているようには見えないんだよね…
あめさんの目には、この世界がどんな風に映ってるんだろう。
あめさんは、どんな世界を生きているんだろう。
あめさんは、何を想って、何を感じるんだろう。
「……そんなに見ないでくれる?」
予告も無しに動いた口に、聞こえて来たいつもの声。突如開かれた、その大きな瞳。
「見物料、ちょーだい」