ぶつぶつ独り言のように言いながら、私に告げた事実。


「今日は何も無くてさ、」

「はい」

「つまり…シラフ」

「…やっぱり…」


恥ずかしそうに言った彼には悪いが、私はおもいっきり納得してしまった。

可笑しいなぁとは思っていたけれど、でも酔って無いあめさんを見たのは2回目…いや、しっかり見たのは初めてだと言っても良いくらい。もしかして酔ってないのでは?なんて頭の片隅で思いついた自分も居た。

でも、酔ってない今の自分を恥ずかしがるあめさんの思考回路はどこかズレている気がする。何にも恥ずかしがる事も無いし、おかしな事も無いのに…あれ?


「でもそしたら、なんでこんな所に?」


酔っ払ってないあめさんがこんな所に居るのはおかしい。おかしな事だった。だって帰れなくなったり、帰りたくないあめさんじゃないのなら、こんな時間にここに居る必要がない。


「だから、さっき言っただろ?お礼と、謝罪に」


ハルキにどこで会えるのか、この時間のここしか思い付かなかったから。そう言ったあめさんは視線を他所に向けていて、どんな気持ちで話しているのかさっぱり想像もつかなかった。

恥ずかしさの照れ隠しか、面倒だと思っているのか、はたまたこんな事に興味なんて無いのか…

正直、謝られるような事に身に覚えがないなと戸惑う私を余所に、あめさんは私へとゆっくり視線を戻し、真っ直ぐに見詰めて口を開いた。


「この間は助かった。ありがとう」

「…この間?」

「タクシー。んで、ごめん、悪かった」

「え?えぇ…いえ、そんな…」


驚いたし、戸惑った。この人にこんな一面もあるなんて。