大通りから中に入ったこの道。元々人通りが少ないにも関わらず、時刻は深夜の24時。
通行人なんてものはさっぱり居ないし、普段からこの時間は見ないのが普通だ。

それなのに、向かいの店の前に誰か立っている。

もう閉店して、真っ暗なその店。どう考えても店に用がある様には見えないし、うちの店のお客さんっぽい雰囲気でも無い。

ここからじゃ暗くて表情なんかは見えないけど…もしかして、雨が降って困ってるとか?
うん。そうだよ、今日あんなに晴れたんだから、傘を持ってる人のが少ないかも…という事は、私の出番だ。

うんうんと、心の中で頷きながら、私は迷わずその人に向かっていった。


お節介かなとは思いつつも、困っている人を放っておけない質である。電車では絶対に席を譲るし、道に迷ってる人がいたら自分から声を掛けに行く。どんな人にだって、私が出来る事ならなんだってしてあげたいと思う。それが私。

嘘臭いと思われても、誰に何を言われようがそれが私だと胸を張って言える自信がある。

だから今日も例に当て嵌まり、困っているであろうその人を放って置く事が出来なかった。


「あの…雨宿りですか?」


その人の所まで行き、遠慮がちに声をかけてみた。

そして顔を覗き込んだ瞬間、ハッキリと見えた彼の顔。先程まで暗くて見えなかった彼の容姿がハッキリと見えたその瞬間、私は息を飲んだ。


とっても、とっても綺麗な顔――