何に浮かれているかといったら、勿論。
"あめさん”
別に秘密にしておこうと思った訳ではないけれど、人に言い触らす程の事でもないかなと思って、今まで黙ってた。でも、分かる人には分かるもんなんだなぁ。
「お客さんって訳じゃあ無いんだけどね?」と、前置きをして、私はあめさんについて軽く説明する事にした。
傘を貸した彼はとっても綺麗でとっても可愛らしいけど、たまにバイト帰りに会った時、ほぼ酔っ払ってるんだよ、と。だからとっても心配なんだけど、会えるのが嬉しいの、と。
するとやっぱり、こうなる。
「へぇ!その人名前は何ていうの?」
その問いに、私は何て答えようか迷ってしまった。
だって、名前も知らなければ、苗字すら知らない。本名を知らないのだ。教えて貰えなかったのだ。
「…あめさん」
「?」
「名前…ってゆうか、あだ名?私が付けた」
「はぁ?いや、意味分かんないしセンスゼロ」
せ、センスゼロ…傘の子よりは良いと思うのに!
「じゃあさ、何してる人なの?」
「……」