まるで子供のように、断固意思を曲げないあめさん。それで良い訳が無い、一体何が彼をここに引き止めるのか。私だって今日はとてつもなく怠いけど、こんなとこで寝たいとは思わないし、その方が怠いに決まってる。…これもアルコールのせいなのかな。


「とにかく。変な事言ってないで帰りましょう!タクシー捕まえますから」

「…えー?」


ほら立ちなさいと、私はあめさんを支えて立ち上がろうとしたけれど、やっぱり私だけの力じゃあ、成人男性を立たせるのは難しい。どうにか彼を説得しなければ…


「…あめさん」

「んー?」

「立ってくれないなら、私帰っちゃいますよ?」

「……」

「そしたらきっと、こんな誰も通らない淋しい道で一人ぼっちです」

「……」

「しかも夏だから変な虫だって出るし、汗かくし、お酒臭いままだし、次の日にはタクシーにも乗れないくらい大変な事なってるかもしれません」

「……」

「それに起きたのが早朝だったらタクシーも走って無いかも…あーあ、あめさん大変だなぁ」

「……」


段々あめさんの顔が険しくなっていくのをみて、頃合いだなと感じた。ここで救いの手だ。