その日、私は疲れきっていた。
今日はとっても忙しかったし、とっても気を遣ったし、いつもよりとっても長い時間に感じて…もちろん、バイトの話である。もはやエネルギーは残ってない。帰るのすら怠い。
あぁ、帰ったらお風呂入れなきゃ、湯舟に浸かりたい。でも入れる元気があるかどうか…あれ?そういえば明日は何時に起きればいいんだ?何限からだっけ…あ、冷蔵庫空っぽかも…コンビニ行っとく?…無理無理、直帰に決まってる。
「はぁ…」
大きな溜息が胸の奥から溢れ出た。現実は、どうしてこうも色褪せて見えるのだろう。
沢山のやらなきゃならない事、やりたくない事、出来ない事に囲まれて、同じ日々を繰り返し過ごしている。私は、私に与えられた人生を生きている気がしてしょうがない。
それは、皆も同じなのだろうか。
…あの人も、同じなのだろうか。
いつもの階段に近づいた時、視界に金髪を捕らえた私はふと思った。どこか違う世界の人間のようなあの人も、同じように疲れて落ち込んだらするのかな。
引き寄せられるように、自然と足は彼のもとへ向かう。もう平気だよね?声を掛けても、大丈夫だよね?
「…あめさん?」