ユイめ…と思いながら、私は小さく息をはく。
「まぁ、なんていうか…気持ちが乗らないんですよね」
――あめさんのようにはならないんです。
その言葉は、心の奥に閉まっておいた。
ミトさんは、「ふーん」と、適当な返事をする。
「じゃあ、俺にしとく?」
「アサヒさん大好きーな人が良く言いますよ」
すると、「あらー痛いとこつくね」なんておどけて見せて、信号が青になると同時に車を発進させた。
この人は何が言いたいのだろう。ずっと避けて来た話題を出してみたり、そのくせ興味無さげだったり、しまいには心にも無い事を言って…本当に、何が言いたいのだろう。
会話が止まり、静かになる車内に流れるのは、先程と同じ曲。私はまた、それに耳を傾けた。
「これ、誰の曲ですか?」
自然と口を出た疑問。
「あぁ。まだ出てないんだけど、なんか海外仕込みの本格派アーティストらしいよ」
「……え?」
「周りが結構騒いでるよ。次、ガツンと来るかもね」
ミトさんは楽しそうにニヤニヤと笑っていて、その笑顔の裏には絶対何かあるなと察知した。この人はいつもそうだ。そうやっていつもこの人は……あれ?
私は、頭の中に何か引っ掛かるものに気がついた。
「海外仕込みのアーティスト…ですか?あの、それって…」
「はい、到着」