―――あれから3年が経った。
私は卒業を控える大学4年生になっていて、4月からは中学校の教師になる。
忙しい日々が続いたけれど、相変わらずみんなはバイト先に飲みに来たし、アサヒさんとも連絡取っているし、ユイも居るし、ほとんど変わらない日々を送った。
……だからこそ。だからこそ、彼の事を忘れた日は無かった。
あれから彼とは、一切連絡を取っていない。
私達の間には、結局2人だけでの目に見える繋がりは何も残っていない。でもハッキリと別れの言葉を言った訳でも言われた訳でもない。
断った時点で、私には受け入れる心構えは出来ていた。出来ていたのだけれど…私からそれを言い出す勇気なんて、そんなものはこれっぽっちもなかった。
そんな曖昧さを察してくれて、気を遣ってくれているのか、私の前で頻繁にあめさんの話が出る事はなかった。
出たとしても、一瞬の事。それ以上話が広がる事は無い。
それがなんだか申し訳なかったけれど、私には少し…というか、だいぶ助けになった。
だって、今だってずっと、あめさんを想ってる。
「久々に乗ってかない?送ってくよ」
声を掛けてくれたミトさんの車に今、私は乗っていた。車内では私の聞いた事の無い曲が流れていて、激しい曲調ながらも優しさを含んだ歌詞に、私は聞きいっていた。
「…ハルキちゃんさ、勿体ないよな」
信号が赤になると同時に掛けられた言葉に、「何がです?」と答える。
「折角こんなに可愛いんだから彼氏の一人や二人作るべきだと俺は思うね。そうゆう話、腐るほどあっただろ?」
「いや、ないない。そんな事ないですよ」
「えー、俺聞いたんだけどなー、ユイちゃんに」