何が……大事?
その言葉で思い浮かべた人が――私には居た。
するとそんな私を見たミトさんは、「それが答えなんじゃないかな」と、微笑みを浮かべて言った。きっと彼の事だ、私が思い浮かべたのが『人』だという事にも、気が付いているのだろう。
でも、そんなミトさんでも気付いているだろうか?
その言葉で浮かべた人物。それは――お母さん。
あめさんでは、無かったという事に。
ーー
確認をするように、私はお母さんに電話を掛けた。
コール音はすぐに止み、「はい」と、懐かしい声が聞こえてくる。「ハルキです」と答えると、返って来たのは喜びに満ちた、「久しぶりね、元気にしてるの?」という、優しい言葉。
「元気だよ。ごめんね、なかなか連絡しないで」
「そんなの元気なら良いのよ。でも大丈夫なの?今は何をやってるの?学校は?バイトは?」
心配性なお母さんは、いつもマシンガンの如く質問攻めにする。それに「平気だよ」と答えるのもいつもの事だ。
私達親子は血が繋がっていない。だから私はお母さんの子として恥ずかしく無いように、お母さんのようになりたいと思っていた。それが今の私に深く結び付いているのは自覚している。
一方、お母さんにもお母さんなりにそういう決まりというか、目標があるみたいで、私が子供の頃からいつも彼女は言っていた。
私はあなたを立派に独り立ちさせるからね。ちゃんと大学出て就職するまで、何不自由させないからね。
きっと我が家に父親が居ない事もあって、お母さんはお母さんで思い詰める事があったのだろうと思う。だから私を通して、自分に言い聞かせてたのだろう。
私が今の大学に受かった時、誰よりも、もしかしたら自分よりも、喜んでくれていた。
そうだ、私は今、何の為にここに居るんだ、何の為に学生をやってるんだ。
全部、自分の為ーーそして、お母さんの為だ。