――3週間。

3週間後に、彼は出発すると言った。


私はそれまでに決断しなければならない。


「アメリカかぁ……」


一人、部屋でポツリと呟いた。あれからもうすぐ1週間が経つ。

生まれ育った環境の影響もあり、私にとって『海外へ行く』という事は、考えた事も無い、未知の領域の話だった。


簡単な事ではない。言語や文化、法律、そういった何もかもが異なる環境に、安易な気持ちで行っても何も出来ないし何にもならない。それはよく分かっている。

でも…だからこそ、あめさんと一緒になら行けるのではないか。あめさんと一緒なら出来るのではないか。

あめさんとなら、私の世界も変わるのではないか。

そんな気持ちを抱く自分もいる。



あめさんは私にいつもくれた。自分を見詰める勇気と、そのきっかけを。まったく違う世界に住んでいる彼が、私に色んなものを教えてくれたのだ。

だから私はいつも、あめさんといるとわくわくした。世界が広がるような、そんな感覚を得た。そんな彼の目に映る私は、ほんの少しだけマシに見えた。

エゴの塊である――こんな私が――


そこで、思考が停止した。

あれ?私…そんな事を思ってたの?


ユイに相談した時に、絶対について行くべきだと言われた。

これは一生に一度の出会いなんじゃないのかと。そこまで思ってて離れたくないんなら、ついて行かない理由は何になるの?と、逆に聞かれてしまったくらいだ。

その一方で、アサヒさんは私に、ついて行くべきではないと言う。

そこへ行って自分は何がしたいの?自分の目的は何?それが分からないなら行くべきじゃないと思う。私みたいになって欲しくないんだよ、なんて、彼女は私に言った。


……一体、どちらが私の答えなのだろう。