「うん。まぁそうゆう事だね」

「うわー、でも凄いですね…あめさんが…そっかぁ…」


今までの出来事は全て、この為のものだったのだろうと思うと、その時の言葉、様子が全然違うものに思える。とても幸せな事だと思った。皆、前に進んでいる。あの時願ったように。

私の反応を見ていたあめさんも、同じく喜んでいるようだった。それを嬉しく思ったのも束の間、彼はふっと笑顔を消す。


「で、本題なんだけど」


真っ直ぐに私を見据える彼の瞳は真剣だ。何を言い出すのだろう…少し不安。


「俺、また一からやり直そうと思うんだ。もう自分から逃げない」

「はい」

「だから勉強し直そうと思う。色んな事を経験して、学んで、進化しようと思う」

「…はい」


その真剣さに押されながら、私は耳を傾ける。そんな私に、彼は言った。


「俺――アメリカに行くよ」

「…え?」


アメリカ……?


「どれぐらいになるかは分からないけど、長くなる。それだけは言える」

「……」


あめさんが、居なくなる――…

そんな現実に、「そうですか」と、私には小さく答える事で、強がる事しか出来なかった。心が、衝撃についていけていない。

心ここに在らずの私の頬に手を添えて、あめさんはじっと私の瞳を覗き込む。


「だから、一緒に来ない?」

「……え?」

「俺と一緒に、行かない?」


彼は、彼自身の心を表したような真っ直ぐな瞳を、私に惜し気もなく向けていた。