「私には、私達の距離感も、関係も、まったく掴めない!」


お腹から出したような大きな声で、責めるように睨みつけた。あめさんは悪くないとか、そんな冷静な事を考えている場合ではなかった。もう一杯一杯なのである。

それでも、そんな私の態度を見ても、あめさんはまだキョトンとした表情のままだった。その変わらない態度が今の私には逆に、冷静になるきっかけを与える。

気持ちがスーッと引いていき、あれ?私、何言ってるんだろうと思った所で、もう遅い。そうなると、次はどうしようどうしようと、慌て始める事になる。一人脳内大騒ぎの私に、あめさんはそっと問いかける。


「距離と関係が掴めない?」

「え?えっと…はい、そうです…」

「そっかぁ」


うーんと考えたあめさんは、私との間に手の平一つ分のスペースを作った。


「これが、前までの距離」


そう言った後、彼はグッと私に近づく。


……え?


気がついた時には、鼻と鼻がぶつかるぐらいの距離に居て――


「これが、今の距離」


重なった唇が離れた後、遅れて彼の声が聞こえて来た。



え……、え?


私の頭は、今動き出したばかり。


え?今、もしかして、え、つまりこれって…


「ハルキは俺の彼女ですって、そうゆう事」

「――っ!」


驚きに、声が出ない。

まさか本当にっ、いや、でもそういう事だってユイも言ってたし、やっぱり本当に?!


「わっ、私で良いんですか?!」

「そう。私が良いんです」

「え、だって私っ、」

「ねぇハルキ」


するとあめさんは、真っ直ぐに私を見詰めて言う。


「俺はハルキが好き。ハルキは?」