「え、えっと、あめさん」

「んー?」

「えっと、聞きたい事が…」

「あれ?また緊張してる?」

「え!あ、いや、それは」

「ほらー、してるよなー」


何故か嬉しそうに、ケラケラ笑いながら私の頭に手を乗せるあめさん。私はすっかり流されている。


あー、もうどうしよう!何て切り出せば良いのか、むしろ何を聞くつもりなのか、グルグル巡って自分の中でもよく分からなくなって来ている。

そんな時、スッと近付いて来たあめさんが私の耳元に顔を寄せ、「それがまた、かわいー」なんて囁いたから一大事。


「ちょっ、あめさん!き、聞きたい事がっ、あるんですっ!」


真っ赤になっているであろう顔を隠す間もなく、近付かれた方の耳を押さえて、咄嗟に彼から距離を取った。

もう内側も外側も必死な私をキョトンとした顔で見つめながら、あめさんは「なぁに?」と、さっぱり分かっていないような返事を、随分とあざとくする。

あめさんがこんな事をするから、私が大変な事になっていると言うのに、あめさんにとっては何でも無い事ような態度である。あめさんはこのやり取りが気にならないのかな…やっぱりあめさん大人だし、これくらい何でも無いんだろうけど。そうね、あめさんにはこれくらいなんでも無いんだろうね!

徐々に、沸々と沸き上がる怒りに似た感情。でも分かっている。これはただの八つ当たりみたいなもので、あめさんは悪い事をしていない。していないけれど、でもやっぱり私にとっては特別な事で。

「私は気になるし、分からないんです!」

「?」

「だって、なんかあめさんとの距離が近くなった気がするのに、ハッキリしないんだもん!」


思わず取れていた敬語。そんな事は気にもせず、私はあめさんに思いの丈をぶつけた。