「…本当に?」
「え?」
「本当に、あめさんだけですか?」
自分の言葉に対しての私の返事に、彼女は予想外だったようで。キョトンとした表情を見せる。
そんな彼女に私は、「私は他にも知ってますよー?」と言って、挑発的に笑いかけた。
「しかもとっても素敵な人なんです」
「え、どういう事?」
「本人に直接聞いたんで間違いありません」
「何?それって、誰の事を…」
だんだん意味が理解出来て来たアサヒさん。そこで私は意地悪く、「それは秘密ですよ」なんて言ってみる。するとアサヒさんは私のノリに合わせるように、「ホントに居るのかなぁ」なんて、疑わしげに私を見ながら、笑ってくれた。
「そういう人って、気付いてないだけで近くに居るものですよね」
「…近く?」
私が呟いた言葉にアサヒさんが反応した、その時だった。
部屋に機械音が響き渡り、来客を私達は知る事になる。その後に聞こえて来た、お迎えでーすの声で、この時間ももう終わりなのだと分かった。彼はいつも、なぜかタイミングを知っている。
「ミトだ、行かないと」
そう言って立ち上がったアサヒさんを、私は玄関まで送った。…とは言っても、本当に目と鼻の先なのだけれど。
玄関の外にミトさんは居るようで、扉は閉まったままだった。
外で待つミトさんの元へ向かう為に、靴を履き終えたアサヒさんは、「じゃあ、」と言い、扉に手を伸ばした。ーーが、ピタリと止まり、クルリとこちらに向き直る。
「ねぇ、ハルキ」
「はい?」
「あの…あのさ、」