「だからあたしに出る幕なんて無かったのに…こんなにでしゃばって、本当に悪いと思ってる」


シュンとした彼女の様子は、どう見ても嘘をついているようには見えなくて、それが彼女の本心からの言葉なのだと分かった。


「いや、そんなの全然気にしてない…というか、アサヒさんが謝るような事じゃないですよ。本当に」


本当に、私が勝手に気にしていただけ。アサヒさんに否はないのだ。

私の言葉に、「ありがとう」と、アサヒさんは控えめながらも嬉しそうに微笑んだ。そんな彼女を見て、あめさんが放って置けないと思った気持ちが、なんとなく分かったような気がする。


「でも、だとしたらなんで、アサヒさんはあの日私の所に来たんですか?」

「……」


すると、「…うん。そうだね」と小さく呟いた後、私の問いに彼女はバツの悪そうな表情をしつつもハッキリと答えた。


「独りになるのが、怖かったから」


――それは、彼が言っていた言葉と同じもの。


「アサヒとして一人でやってく自信なんて無いし、ユウが居なくなる事で、あたしをここまで引っ張ってくれてた何もかもが無くなっちゃう気がして…それにね、」


そしてアサヒさんは、まるで自分の秘密がバレた時のような恥ずかしそうな様子で、チラリと私を見る。


「アサヒじゃないあたしをちゃんと知って、認めてくれてるのは、ユウだけだったから」


…そうか、そういう方か。それは彼女の心の根っこの部分にあった大きな悩みと一致していて、彼女に対してあめさんが持つ、とても大きな意味を表していた。


それらが私の中で全て繋がった時、私はすごく納得した。彼女がそう思うのは間違いではない。可笑しな事でもない。でも一つだけ、ただ一つだけ間違っている事があると、私は知っている。