全てが揃った、そんな気持ち。私の中で心が決まった。やるべき事がしっかり見えたと確信が持てたのなら、次は進むしか無い。次へ…アサヒさんの、元へ。



「お邪魔します」


我が家にやって来たのは異次元の美しさ。明るい場所で、しかもこんなに間近に見るその姿。私がカチカチに緊張するのも無理は無い。


「ど、どうぞ、どこでもお好きな所に。こんな汚い家ですけど」


外では車の走り去る音。美しい彼女、アサヒが乗って来た車のものだろう。

なぜ彼女が居るのかというと、それは私が呼んだから(ミトさんに頼んだから)で、なぜこの場所なのかというと、以前ミトさんがやって来た時と同じ理由な訳で。


「……」

「……」


それなのに、呼び出した私の方が緊張してしまっているものだから、やたらと静かな時間が過ぎ去っている状況。私が、腹を括らなければ。緊張なんてしている場合ではない。


「…アサヒさん」


どんなに美しくても、どんなに存在感があっても、彼女も私達と同じ人間だ。悩みを抱えて、潰されそうになって、必死にもがいている。


「今日はアサヒさんとお話がしたくて、ミトさんに頼ませて貰いました」

「……話って、あの時のでしょ?」

「はい。どうしても引っ掛かって」


「余計な事かもしれなせんが、どうしてもお話がしたいんです」と私が言うと、始めから冴えない表情だったアサヒさんは、それをより一層暗いものにした。

そして、「分かってる」と、ポツリと呟く。