「あの…あめさん」

「ん?」

「あの……あのですね」

「うん」

「前に、話してくれましたよね?放って置けない奴が居るって…その子が泣いたんだって」

「…うん」

「それって、なんでか分かりますか?」

「え?」

「なんでその人は、泣いたのかなって」

「……」


私の問いに、あめさんは黙り込む。私をジッと見据えるその瞳は、私の真意を探るためのものだろう。

急になんでそんな事を聞くのだと、何の意味があるのだと、あめさんはそう思ったのだろう。私が相手の名前を知っている事を知らないあめさんからしたら、私には全く関係の無い事だから。


それでも私は今、あめさんが泣いてしまった理由を何処まで知っていて、どう思っているのかを確認しておかなければならないと思った。…けれど、これはどこか建前のような気もする。


「…アイツに直接聞いた訳じゃないけど、でも、そうなんだろうなと思う事はある」


ジッと私の瞳を覗いていたあめさんは、言う。


「一人が不安なんだ」

「?」

「今のアイツは、俺とアイツの二人で出来てるから。だから一人では不安なんだよ」

「……どういう意味ですか?」


私が尋ねると、あめさんは渇いたような笑みを浮かべる。これは…自嘲の笑み。


「そうしたのが俺なら、俺は最後まで面倒見るべきなのかもしれない。それでも何の問題もない。でも――」


そう言って、私を通してあめさんは遠くを見る。


「――それじゃあやっぱり、何も変わらないんだ」