「…なんで泣きそうなの?」

「え?」

「いや、その…うん」

「?」

「いや、こっちのハナシ」

「??」


急によそよそしくなったあめさんは、触れていた私の頬からそっと手を離した。離れていった温度に、私は少し淋しさを感じる。


「……話」

「はい?」

「話、あるんでしょ?」


おいで、と言って入口へと向かうあめさんに、私は急いで着いて行く。


あぁやっぱり。と、胸の奥で温まるものを感じて確信する。やっぱり私、あめさんだ。


「で、話って?」


まるでこの間の時のよう。まったく同じ場所に同じように腰かけて、私とあめさんは向き合っている。


「…はい。あの、あめさんの事で少し、聞きたい事があるんです」

「俺?」

「はい。出来る限りで良いんです、教えて欲しい事があって」


私がそう言うと、あめさんは少し身構えたような様子を見せた。きっと珍しい事だから…不思議に思ってるんだと思う。


なんだか、とっても緊張する。何をどう聞くべきなのか考えてきたはずなのに、いざとなると口が開かない。ミトさんの時はすんなり言えたのに…


この違いはやっぱり――そういう事なんだろうなぁ…