…と、その時。


「ねぇ」


突如、後ろから声が掛けられた。

その瞬間、私は今まで考えていた色々な事が全てどこかに吹き飛んでいったと、本当に感じた。

期待を込めて振り返った私の先に立つのは、綺麗な金髪の彼。目が合うと、彼は無邪気に笑って見せる。


「やっぱり傘の子じゃんね」


あ…あれ?傘の子…ですか…

覚えててくれた!という喜びと、やっぱり忘れていたか…という気持ちから、なんとも複雑な心境にたたされる。

苦笑いの私を見て察したのか、彼は「おっと、違うんだよな」なんて独り言を呟きながら、えーとと、しばしの間をおき、


「ハルキでしょ?ハルキ」

「そうですそうです!」

「ね?そこら辺バッチリ」


と、ドヤ顔を披露して、とても満足げだった。

…うん。なんか、この感じ、


「…お酒、入ってます?」

「ん〜?ちょっとね」


やっぱり。

すると彼は、「こんなんヘーキ、だって俺、歩いてるもん」なんて言い出すから呆れてしまう。

歩けてれば平気って、酔ってる基準はどこなんだ…