その表情が、言葉が表すもの。それは、私が求めていた以上のもので。次にまさか、と思わされたのは私の方だ。

それって、それってつまり――


「ハルキちゃん」


口を開きかけた私に、ミトさんの制止を促す声が割り込んだ。


「ここだけの、秘密な」


ミトさんの笑顔は、はにかんだような笑顔に変わっていて、私は心がほっこりした。やっぱりそうだ、そうなんだ。


「素敵です、ミトさん」


この事実が、私は嬉しい。だから後は私の役割だ。


「後は私に、任せて下さい」

「え、もう良いの?」


拍子抜けした、という表情を見せたミトさんは、他に聞きたい事あるんじゃないの?と、目で訴えている。

私は知らない事だらけ。何の仕事をやっていの?とか、どういうつもりで私に?とか、あめさんは何の人?とか、本当に何も知らない。だから始めは、私には無理だと思った。

でもミトさんは言ったのは、アサヒさんを、助けて欲しいという事。


「私、考えたんです。アサヒさんは何を抱えてるのか」


あの言葉の、意味は何か。


「助ける為に必要なもの。それはきっと、私は何も知らないとか、そんな私じゃ力不足だとか、そういう事じゃないのかもと思いまして。助けようと思うなら大事なのは私では無くて、アサヒさんの周りの事。だから、誰かが居る事実を確認したかったんです」


アサヒさんにはミトさんが居る事が知れた。アサヒさんを助ける為に、私から知りたいものはそれで充分なのだとミトさんに伝えると、彼はなんだか納得していないような、スッキリしないような反応を見せる。戸惑っている様にさえ、見える。


「でも…じゃあアイツは?」

「……」

「ユウの事、知りたいんじゃないの?」


じっと、心の底を覗かれてるのではと思う程に、ミトさんは私の様子を窺った。

優しいミトさんは、きっとわざわざこんな所で話しているのだから今こそ聞くべきだと、知りたいのだろうと、心配してくれてるのだろう。伝える決心をして来てくれたのかもしれない。


「大丈夫です。…本人に、聞きます」


そう、色々沢山考えた3日間。アサヒさんを助ける為に、何も知らない私ではダメだから、なんて言うのはただの言い訳。…行くよ、私は、他人では無く本人に聞く。


「あめさんの事だから、ちゃんと本人から聞きたい」


あめさんは嫌がるかもしれないけれど、それが、彼に対する私の精一杯の誠意だから。