「…ハルキちゃんは、勘が良いな」


ミトさんがそう呟いたのは、それからしばしの沈黙を経た後のことだった。


「事実かどうか。それを客観的に判断するとしたらなら――それは、事実ではない、といえるのかな」


"客観的に" そう彼は強調する。


「アイツからしてみたら正にその状態なんだと思う。でも、それはアイツの思い込みだ。アイツ自身が自分を追い込んでる」


そう言ったミトさんの言葉に、私はやっぱりな、と思った。ミトさんも、私が何を聞きたいのか分かって答えてくれたみたいで、話はスムーズに進む。


「問題は、アイツをどう思い直させるかっつー事。そのきっかけを探してるんだ」


何かあるのか?と、彼から視線で答えを問われていると感じた。私はその答えを用意していたけれど、もう一つだけ、その事実を踏まえた上で、確認したい事がある。


「事実ではないって、言いましたよね?それってつまり、あめさん以外にもアサヒさんには居るって事ですよね?」


念を押す様に繰り返す私に彼は訝し気な表情をしつつ、そうだけど、と、返事をする。その答えに、私は次の言葉を言う決心がついた。


「それはミトさんの事ですか?」


――あなたは、彼女の味方ですか?


私の質問に、ミトさんは静かに反応した。まさかと、驚いているような彼をしっかりと見届ける。一つも取りこぼす事などないようにと思った。

すると彼は、固定された口元をゆっくり持ち上げて、


「俺だけでも良いくらいだ」


不敵に、微笑んだーーそれは、初めて見る彼の表情だった。