コーヒーを二つ。彼の分と自分の分とを用意して、そっと一つ、彼の前へ置いた。「ありがとう」と、あのいつもの笑顔を貼付けて言う彼に軽く返事をし、私もゆっくり腰を下ろす。


ここは、私の家。何でも答えるという言葉が実行される場所として、私の家が選ばれた…というか、私が提案した。人にあまり聞かれたくない話だという事で、だったらもう場所も知っている事だし、我が家にしましょうかと。そういう事になった。


「じゃあ、何から話せば良いかな?」


空気が落ち着いた所で、そう、テーブルを挟んで向かい側に座るミトさんは言った。

あれから3日経った今日、その質問の答えはこの3日間の間に私の中で考えに考えられたものだった為、答えるまでに余計な時間を必要とはしなかった。


「私が聞きたいのは、アサヒの事。それとミトさん、あなたの事です」

「………俺?」


ミトさんは、まさかという驚きと、何故?という疑問を私に目で訴えてくる。

そんな彼に、私は軽く微笑んで見せた。今から順に話しましょう、という気持ちを込めて。


「あの日、アサヒ…さんに、私は "ユウを取らないで" と、自分にはユウしか居ないんだと、言われました」


そう言って思い浮かぶのは、あの涙を浮かべる綺麗な瞳。


「それは一体、どういう事…というか、それは本当に、事実なんですか?」

「…事実?」

「はい。あめさんしか居ないっていうのは、それはアサヒさんのどういう状況を表してるんでしょうか」


あれだけ考えた事なのに、なぜか口で言おうとすると、上手く言えない。どういう状況を表してるのかって、もっと上手い言い回しは無かったのかと、自分に呆れてしまう。

ちゃんと伝わったのかと内心ビクビクしながら、私はミトさんの返事を待った。