私がそう言うのを、ミトさんは待っていたのかもしれない。どこか楽しげに、彼は「やっぱりなぁ」と呟いた。


「考えは?」

「…はい?」

「考えはまとまったの?」

「……どういう事ですか?」


ミトさんは、真っ直ぐに私に向かって視線を送る。


「あの子の力になりたいんなら、全ての答えを出さなきゃならない。あの子の事も、アイツの事も……もちろん、君の事も」

「……」

「こんな事を言うのもアレだけど、事は君が思っているより重大なんだ。分かってくれるよな?」

「……」


思わず、私は俯く。"事の重大さ" …私、分かってる?


「関わっているのは個人的な事だけじゃない…って、事ですか?」


君が思っているより重大だなんて、大袈裟にも思える言い方。それはただの気持ちの話だけではないという事?それがもっと現実的な何かに影響しているという事?でも、だとしたら、


「……私、何も知らないんです」


――私には、無理な事だ。だって私は何も知らないし、大事な事には一切何の関係も無い。そんな私が、一体何になるというのだ。


「でもあの子は、君の所に来た」



優しげな口調で聞こえてきたその言葉に、私は俯いていた顔を上げ、彼を見る。彼は変わらず真っ直ぐと、力強く、私を見つめていた。


「それは、変わらない事実だ」