「!」
聞き慣れた言葉が繰り返された事で、私はようやくそれが私の名前だった事に気が付いた。
反射的に辺りを見回すと、何回か呼ばれていたのだなと分かるぐらいに、私へ向かって視線が集まっているのがよく分かった。
「だからぁ、ラーメンは味噌と醤油、どっち派だって!」
「……」
「俺とミトは味噌な。んで、たかまっちゃんとユウは醤油。なぁ、どっち?」
……ぶっちゃけ、それ所ではない。
あまりにどうでも良い内容だった事に、素直にゲンナリする自分。でもそんな様子を出してはいけない。いつもと違うのがバレてしまう。こんなの、いつもの事じゃないか。(金田さん限定)
だから、「えっと私は――」と、とりあえず答えようとした、その時。
ガタっと椅子が引かれる音と共に立ち上がったのはミトさんで、当たり前に何を言う訳でも無く、彼は静かに席を離れるものだと思ったのだけれど…ミトさんは、自分の事を目で追う私に、何かを言いたがってる私に、気付いていたのかもしれない。
チラリとこちらを見た彼と目が合ったと思ったら、小さく笑ってみせた。
"話があるんだろ?"
まるで、私にそう言っているかのよう。
「……私は、塩ラーメン派です」
そう答えて、ミトさんが視界から消えたのと同時に、私は彼の後を追った。
きっと、これはそういう事だ。