すっきりしない表情で私を見詰めていたアサヒは、聞こえるように言ってるとは思えない程に、小さな声で呟く。


「…あたしの事、何も言ってないんだ…」

「え?」

「分かってたけど…良いな。羨ましい」

「……えぇ?」


どうやらそれは、私に言ってる訳では無いようだったけど、そう言った彼女の目はしっかりと私を捕らえている。でも私には、その瞳が表す意味を読み取る事が出来ない。


「あたしは、ユウと、仲間…みたいなものではある」

「!」


これは、一応肯定されたという事で良いのだろう。アサヒと仕事してるなんて、あめさんは一体何者なのか。やっぱり音楽関係?アサヒのスタッフとか?


「実は時間があまりないの。少しだけの約束で連れて来て貰ったから…秘密にね」

「秘密に?」


誰に?という意味を込めてそう尋ねると、彼女は小さく微笑み、「でも、やっぱりやめれば良かった」と、目を伏せて後悔の言葉を口にする。


「あたしには…何も言えない。あたしなんて、ただの邪魔者じゃん。あたしが居なくなれば良いだけの事だよね。結局、それを確認しただけだった」


彼女の瞳は、大きく揺れ、滲んでいく。発する言葉は暗く、後ろ向きに沈んでいくようなものばかりだった。彼女の心の中に溜まった、気持ちが溢れ出してくる。


「分かってんだもん、本当はずっと分かってた。様子がおかしかったのも、何かを隠してるのも、全部気付かない振りしてた。でも、あたしには、ユウしか居ないんだ」


決意のようなものと共に向けられた強い瞳から、頬へと涙が伝った。