…なんで?今私達はきっと同じ表情をしているだろう。私だって、謎が深まるばかりだ。

互いに互いの様子を見る時間が続いた。その間、私達の間に横たわる沈黙が気まずいが、下手に口を開けない。よく分からないままそんな事をしたら、無駄な事をして終わるか、相手を不快にさせて終わってしまうのが目に見えていた。


「…もしかして、知らない?」


彼女の発言に、当然、「何をです?」と、答えるしかない。


「あたし達の事」

「え?」

「あたしと、ユウの事」

「……え?」


一瞬、頭が真っ白になった。

あたしとユウって…、アサヒと…ユウ?

……ユウ?


最近、よく耳にするその名前。そしてこの場所。それらが結び付いて表す答えは、つまりーー


「彼の事で…話したい」


ーーまさかお姫様が、あのアサヒだったなんて。


あめさんが大切にしている人。どうしても放っておけない人。それが、彼らの言うお姫様。

この人が――アサヒがそうなんだと、私は確信した。


そうすると全ての辻褄があった。不規則な時間の仕事、仕事仲間としてのお姫様との関係、あの楽譜。全てが、何の問題もなく自然と繋がっていく。


「え、と。つまり、あめさ…いや、彼とは、仕事仲間って…事ですよね?」


でもそれら全ては私の憶測に過ぎない。だから私は、ちゃんと口に出して確認を取ったのだけれど、返ってきたのは複雑な表情だけという、なんだか歯切れの悪い反応だった。