でも、


「友人では無い、かな」


やっぱり、期待に沿った返事なんて返って来なくて。

友人じゃないのなら、だったらその人は何なんだろう。…いや、友達じゃないのだから、それってそういう事だ。


「じゃあ…恋人、ですかね?」


私は、思った事を口にしただけだ。別にそれだけの事なのに、なんであめさんの顔が見れないんだろう。

諦めている自分がいるからだろうか。諦めつつも、もしかしたら…と思っている自分がいるからだろうか。
…?でも、それってどういう事なんだろう。


どんどん生まれる新たな疑問に、私の思考は淀みなく働き続ける。そんな私の頭でも、その声はハッキリと聞こえてきた。


「違う、そうゆうのじゃ無い」


ホッと胸を撫で下ろしたような感覚を得たのは、気のせい?

その答えを知る間も無く、あめさんは言う。


「ここにいんのも、アイツも、全部仕事繋がり。つまり仕事仲間」


あめさんの言葉でようやく私は、あめさんの顔に目を向けられた。そこには何やら嫌そうな表情をしたあめさんが居た。

なんでこんな表情をするのだろうと思うものの、私が独自の知識で理解出来る訳がない。


「あ、じゃあとりあえず生二つね」


ニッコリ笑って言ったあめさんの一言ですっかり忘れ去られていた仕事へと戻った私は、裏で生ビールを注ぎながらも考えが終わらない。

…なんで、あんな表情をしたんだろう。分からない。分からないけど、多分、仕事の部分。その部分が彼にとって一番嫌な部分なのではと、思う。


それが一体どういう意味を持つのかは分からないけれど、私がこれ以上あめさん自身にそれを聞く事はなかった。