私を遮るように発せられたその声は、私の背後から聞こえて来た。言わずとも知れたその声。それはまるで、タイミングを謀ったかのように、いつも私を手前で引き止める。
"これ以上は知られたくないんだ”そんな聞こえるはずの無い声が、私頭の中に響き渡った。…でも、それでも。
「お姫様って誰ですか、あめさん」
私は、それを口にせずにはいられなかった。
何故だかは分からない。でも、この言葉は何よりも耳に残るんだ。初めて聞いた、あの日から。
私のその問いに、あめさんは少し難しそうな表情を作った後、金田さんへと視線を送る…というか、金田さんを睨みつける。睨みつけられた金田さんはというと、明らかに焦った様子を見せて、逃げるようにあめさんから顔を逸らしていた。
こんな状況を見せられたら、何かあるぞと思うしかないじゃないか。
私があめさんから目を逸らさないでいると、私の方へと視線を戻したあめさんは「そんな恐い顔しないでよ」なんて呟き、スッと覚悟を決めたような、そんな表情へと変わった。
「…前に言った奴の事。ソイツの事をそう呼んでる」
……前に言った奴?