「…グズってる?」


一体何の事だと、疑問に思う。私はあめさんのプライベートな部分を何も知らないけれど、あめさんがグズっているから遅くなっていると言う事だろうか…いや待って。プライベートの事を詮索してはいけないと、今反省したばかりだ。

それなのに、また尋ねてたりなんかして…私、なんて学習能力が無いんだろう。また気遣わせたしまったら大変だ。


「すみません、長々と。私戻ります。ごゆっくりどうぞ」


弱々しく告げて立ち去ろうとすると、金田さんが慌てて声をかけてくれた。


「あの、ハルキちゃん!ね?グズってても絶対ここには来んと思うし、大丈夫!ほら、いつもの事だろ?アイツの我が儘は」

「そうなんですね…」

「そうそう!もうずっとお姫様だからな、仕方ねぇっちゃ仕方ねぇんだよな!」


……ん?


何か噛み合っていないように思う。お姫様?あめさんが?でも何か妙に引っかかる、聞き覚えのあるような気がするその単語。

…いや、間違いない。私は聞いた事がある。


「……お姫様、ですか?」


そう呟いた時にジロっと金田さんを睨んだ高松さんの反応で、私は確信を得た。


ずっと心のどこかにあったその単語。私はてっきりグズってるというのはあめさんだの事だとばかり思っていたけれど、どうやら違うらしい。

グズっていたのはあめさんではなく、そのお姫様って事だ。お姫様がグズってるから、あめさんは来れないのだ。


「あの、お姫様ってだ、」

「あー、疲れたぁ」