それからバタバタと働いている間に、気が付けば、そろそろ予約時間から1時間が経過する所だった。つまり、二人が来店してからもうすぐ1時間が経つ。

一体いつになったらあめさん達は来るのだろう。私が二人のもとへ顔を出すと、二人は何かの用紙に真剣に目を通していた。


「?、何見てるんですか?」

「うおっ!」


驚いた声を上げたのは金田さん。金田さんは私に気が付かない程集中するくらい、大事な事をしていたのだろう。声を掛けてしまって申し訳なく思い、すみませんと謝った。

そんなに大事なその紙は、何が書いてあったんだろう。覗き見なんて失礼な事はしないけど、とても気になる。するとまたもや私の顔には出ていたらしい。高松さんがピクリとも表情を変えずに、ひらりとこちらに見せてくれた。


「楽譜だよ」


そこには、私には馴染みの無い音符と文字が並べれていて、しっかりと目を通す暇も無く楽譜は片付けられた。

きっとあんまり他人に見せるような物じゃなかったんだろうな…それなのに、私が気にした素振りをするから見せてくれたのだ。人のプライベートにむやみに侵入してはダメだ。悪い事をしてしまった。

「すみません、ありがとうございます」

「別に。大したもんじゃないから」


そう、高松さんは気を遣ってくれた。ありがたい。


「…あ、そういえば。遅いですね、あめさん達」


話を変えようと話題を出すと、次に答えてくれたのは金田さんで、「あ〜、グスってんのかもな」なんて、独り言のように言った。