彼の、強い視線で射貫かれた。 "動くな”と、目で言われてのを身体が察して動きを止める。
「良い子だね」
きちんと言いつけ通りにその場に留まる私へ、彼はへらりとした笑顔を浮かべて呟き、何事も無かったかのように話しを始める。
「ただ、ちょーっと回ってるだけ」
「…何がですか?」
「アルコール」
「……あぁ」
なるほど、と。そんな彼につられて、私も自然と身体の力が抜けたのが分かった。
これで今夜の出来事、全てに納得した。饒舌な口も、にこやかな顔も、ホワホワした雰囲気も、全てはアルコールのせい。まるで別人なのは、素面と酔っ払いの違い。
つまり、前回が普段の彼だと、そういうこと。
可愛いのがアルコールのせいだと知って、なんだかガッカリしたような気持ちになったけど、どちらにしろこの人はこの人。誰もが見惚れるその姿に、何も変わりは無い。
「じゃあね」と柔らかに告げて、彼はその場を去る。明るい大通りに近付くにつれて、彼の髪がよく目立った。
暗闇の中に溶け込んでいたその髪は、誰よりも明るく、誰よりも輝いて見える――金色だった。