なんだかよく分からない感情にモヤモヤする。この気持ちはなんだろう?
「こちら、予約用のね」
キッチンから用意された料理を受け取る。ついに来た、私の出番だ。行くぞと気合いを入れる反面、妙に緊張している自分を隠すように、どこかぎこちなく彼らのテーブルへとお料理を運ぶと、「やっと来たよーハルキちゃーん」というミトさんの声がした。
「はい、こちら噂のハルキちゃん」
「噂?」
「で、こちらが噂も出なかった高松と金田」
「えぇ?」
そうミトさんが指差す先に居たのは始めてみる男の人達で、同じく黒スーツを着ている所から彼らも同じ仕事仲間なのだろうと予測出来た。
「こんちは、初めましてだねー」
「あ、はい。初めまして、ハルキです」
軽く私が名乗るとそれぞれが自己紹介をしてくれて、長髪の方が高松さん、鼻にピアスをしている方が金田さんだという事が分かった。なんだか皆さん個性が強そう…類は友を呼ぶ、という事なのだろうか。
「ねぇ、俺には?」
聞こえてきたその声はもちろんというか、当然というか、先程とは違う私のよく知る彼のもので、私は、
「え、何がですか?」
何の事だか分かりませんといった、素知らぬ顔で惚けてみせる。だって私はショックだったのだ。顔をそらされた気持ちが分かりますかと思うし、あめさんは酔ったらこうなるなんていつもずるい。
私のちょっとした意地悪に彼はムッとした表情を見せて、「まだ何も言われてない」と、気に入らないのだと気持ちを露わにする。
「…こんばんは、あめさん」
まったくこの人はと思いつつ、笑顔で挨拶すると、あめさんはニコニコして「それそれ」なんて満足気に言った。