「…ハルキ?」
「はい。私の名前、ハルキって言います」
そう、私の名前はハルキ。傘の子ではなくハルキである。どうか覚えてくれますようにと、彼を真っ直ぐに見詰めてみた…けど、駄目だ、やっぱり駄目だ!
見詰め返されたその目力に耐えられなかった私は、高まる心拍数を抑え、早々に目を逸らす。命の危険がある行為だった。
それでも一応私の気持ちは伝わったらしい。
「ハルキね、分かった」
納得したようにそう言った彼は立ち上がり、
「じゃあね、ハルキ」
最後にもう一度笑顔を見せて、階段を下り始める。その様子をニコニコしながら私は「はい」と返事をして、下りて行く彼の背中を眺めていた…んだけど、
「!、だ、大丈夫ですか!!」
突如ふらっと、よろける彼に急いで駆け寄ろうとすると、振り返った彼は、「大丈夫だから」と、私に静止の合図を送る。
「今日は全然ヘーキ」
「はい?」
「だから気にしないで」
「いや、でも…」
「ハルキ」