だって絶対に可笑しい、あのタイミングで登場するのは可笑し過ぎると思う。あの場面で見計らったように現れるには、もう盗聴器とか必要なんじゃ…まさか、私に?!
焦慌てて自分の衣服を確認してみるけれど、特に何も見当たらない。
「無いから。ソレは無いから」
何がとも口にしなかったのに、ミトさんにはすぐに伝わったらしい。彼は笑って私の失礼な行為を許した。
「で、ですよね」
何を馬鹿な事を考えたんだと、私も思わず苦笑いである。
車が止まった事を感じて外の風景に目をやると、調度我が家の前に到着した所だった。なんという近さだ。今思えば送って貰わなくても帰れたのでは、と思う。
「じゃあね、ハルキちゃん」
ミトさんの帰るよう促す言葉に「あ、はい。ありがとうございました」と、反射的に答えてドアを開けた瞬間、私はちょっと待てよ?と気がついた。
「いや、あの、なんでかまだ聞いてないんですけど!」
聞かなきゃ夜も眠れません!と、心で思いながらミトさんに訴えると、ミトさんは「あらぁ」なんて言いながら困ったような表情を浮かべた。
「…別に何もしてねぇんだけどなぁ」
「そんな訳ないです」
「いや、ホントなんだけど…まぁ、アレだよな」
「?」
するとミトさんは、意地悪く笑って私に言う。
「ちょっとくらいの不思議があった方が楽しーだろ?」