帰りの車内は、当然私とミトさんの二人きりだった。ゆっくりと出発した黒い車の目的地は、私の住むアパート。
ここから近いと分かった以上、聞きたい事は今すぐ聞くべきだった。すぐに家に着いてしまう。
「ミトさん!」
後ろから身を乗り出す勢いでミトさんに声をかけると、ミトさんは軽く驚きながらも、「何?」と、バックミラー越しにチラリと目線をくれた。
「あの、凄く気になったんですけど」
「うん」
「もう本当に今日聞かなきゃ帰れない位なんですけど」
「うん、何?」
「あの、ミトさん」
「はいはい」
「もしかして、聞いてました?」
「聞いてた?」
眉間に皺を寄せつつ、「何を?」と、私に尋ねるミトさん。
「話です、話」
「?」
「さっき家でしてた、あめさんと私の話です」