「おう、さっきぶりだね」


入って来たのは、ミトさんだった。

その姿を確認した瞬間、ホッとして、張り詰めた緊張感が霧散した。なんだ、違うのか。よかったと。だから、


「なんだ…ミトさんだったのか」


口からするりと出てきてしまったのは、そんなつもりの無かった言葉。まさかのとても失礼な事を言っている自分に驚いた。

それにミトさんは、「おいおいハルキちゃん、そりゃ無いよ」と、わざとらしく落ち込んでみせたけど、その後、特に気にした様子も無く、私に向かって「じゃあ行こうか」と言う。しまったと、おろおろしていた私は今、とにかくハテナマークである。


「えっと、行くって何処へ?」

「家だよ家。帰るでしょ?」

「帰る?」

「そ。話ついたよな?そしたら送るから乗ってきなよ」


にこやかに微笑むミトさんの提案に、私はもちろん戸惑った。

なんでこんな、話の終わった瞬間にお迎えが?タイミングが良過ぎるような…もしかして、全部聞いてたの?でも何処で?


「…ハルキ」


軽くパニック状態の私を呼び戻すように、名前を呼んだのはあめさん。


「大丈夫だから、乗ってきな」


私の困惑が伝わったのだろう。彼は優しく私を促した。その言葉に私は自然と頷き、そのまま帰る体制に入る。あめさんの影響力は凄い。あめさんに言われると、すんなり心に届く。

そして部屋を出る私に、「またね」と言う声がかけられた。